
リゾコム編集部
八ヶ岳南麓・西麓の別荘市場は、買い手の中心が移住・二拠点層という「住む人」の市場です。山梨側(北杜市)と長野側(富士見・原村)の違い、標高と冬の実態、北杜市の景観条例、家として売るか別荘として売るかの戦略まで、リゾート専門の宅建保持者が解説します。
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「八ヶ岳の別荘は移住ブームで売りやすいと聞いた」「清里にある親の別荘に、冬は誰も行かなくなった」。八ヶ岳の売却相談では、この2つのご相談が同じくらい多くあります。
先に結論をお伝えすると、八ヶ岳の別荘を買う人の中心は「住む人」です。避暑のための別荘客ではなく、移住や二拠点生活のために八ヶ岳で暮らそうとする人が、この市場を支えています。この点で八ヶ岳は湘南に似ていて、別荘を「住む家」としても売れる強みがあります。ただし標高1,000m前後の高原で暮らすことになるため、買い手は冬を含めた暮らしやすさを厳しく確認します。この記事では、売却の基本(別荘売却ガイド参照)を八ヶ岳に当てはめて、山梨県と長野県にまたがる市場の構造、売れやすい条件、北杜市の景観条例、売り方の考え方を解説します。
八ヶ岳の別荘市場は、山の南側にあたる山梨県北杜市(小淵沢・大泉・清里・長坂・高根)と、西側の長野県富士見町・原村にまたがっています。中央道と中央本線(特急あずさ)で新宿から2時間ほどという立地が、移住や二拠点生活の需要を支えています。
買い手は大きく3つに分かれます。
山梨側と長野側の違いは、大まかに言えば「取引事例の多さ」と「アクセス」です。北杜市の小淵沢・大泉・長坂周辺は移住需要が集まり、取引事例も比較的多くあります。

一方、富士見・原村は別荘地とペンションの文化が強く、諏訪方面からのアクセスで動く市場です。

国土交通省の不動産情報ライブラリで市町村ごとの取引を見比べると、事例の多さの違いを確認できます[2]。そのうえで、同じ八ヶ岳でも「標高」と「別荘地の管理状態」によって、売れる物件と売れにくい物件がはっきり分かれる、というのが八ヶ岳を扱ってきた当社の実感です。
建物側の準備(湿気や凍結の履歴、設備の記録、書類の整理)は、建物準備ガイドの5ステップがそのまま使えます。
北杜市には景観法に基づく景観条例と景観計画があり、市の区域を「山岳高原景観形成地域」と「田園集落景観形成地域」に分けて、建築や開発を行う際のルールを定めています。別荘地の多くが含まれる山岳高原景観形成地域では、建築物の新築・改築・増築のうち、工事部分の床面積が10㎡を超えるものは、着手の30日以上前に市へ届出が必要で、色彩や配置などの景観形成基準を守ることが求められます[3]。市は届出の内容を審査し、基準に適合していれば原則30日以内に適合通知を出し、適合していなければ指導や勧告を行います[4]。
売主にとって大切な点は2つあります。1つ目は、買い手から「建て替えや増築はできますか」と聞かれたとき、この届出制度と基準があることを前提に答える必要があることです。小さな増築でも届出の対象になることがあるため、「自由に建てられます」とは言えません。2つ目は、この条例が別荘を持つ二地域居住者にも市民と同じ役割を求めていることです。八ヶ岳の景観が制度で守られていることは、買い手への説明材料にもなります。適用される基準は地域や物件によって異なるので、売り出す前に市の資料で自分の物件がどの基準に当たるかを確認し、すぐに答えられるよう準備しておいてください。
なお、富士見町・原村側にも各自治体のルールや別荘地ごとの規約があります。売り出す前に町村と管理事務所で確認する手順は同じです。
買い手の中心が移住を考える人である以上、八ヶ岳の売り方は、湘南の記事で解説した「別荘として売るか、家として売るか」の判断が重要になります。移住を考える人に向けるなら、冬の実態・生活の利便性・学区・通信環境といった生活に関する具体的な情報で資料を作ります。別荘を探す人に向けるなら、眺望や敷地での過ごし方を中心に見せます。物件の条件から、どちらを主な買い手にするかを決めて、資料を作り分けます。
税金についての注意も1つあります。買い手が「家」として買うかどうかに関係なく、売主の税金は、売主自身がその物件をどう使っていたかで決まります。別荘として使ってきた家には、自宅を売ったときの3,000万円特別控除は原則として適用されません(詳しくは3,000万円控除の記事をご覧ください)。また山梨県の不動産取得税では、毎月1日以上居住するセカンドハウスは一般の住宅と同じ減額の対象になり、もっぱら保養のために使う別荘は対象外と整理されています[5]。これは買い手側の取得費用に関わる話なので、移住を考える人への説明に使えます。
八ヶ岳でも、バブル期に多くの別荘地が分譲されました。管理会社が機能していて道路と水道が維持されている別荘地と、管理組織が弱くなり区画が荒れ地に戻りつつある分譲地では、同じ標高・同じ眺望でも売却の難しさがまったく違います。この構造は伊豆・那須の記事で解説した管理別荘地の考え方と同じで、売り出す前に管理会社へ確認する項目(名義変更の費用、精算が必要な費用、規約)も同じです。
古い建物の扱いについても結論は同じで、解体を急がないことです。移住を考える人には「安く買って自分で直す」買い方が定着しており、建物付きの方が動くケースが実際にあります。解体すると固定資産税の住宅用地特例が外れ、保有コストが上がる場合もあるため、まず現状のまま売りに出して反応を見てから判断してください。
基本は相場の調べ方の4ステップです。八ヶ岳で補足する点は2つあります。1つ目は、取引事例は小淵沢・大泉・長坂周辺に多く、清里の奥や富士見・原村の別荘地では少ないことです。事例が少ないエリアでは、同じ別荘地内の過去の取引と管理状態をもとに価格を判断する必要があり、経験のある業者による訪問査定の重要性が高くなります。
2つ目は、買い手が動くのは主に春から秋で、流れと期間の記事で解説した逆算のスケジュールがそのまま使えることです。ただし移住を考える人には「冬の実態を自分の目で確かめたい」という人が多く、冬の内見にも意味があります。雪と寒さのある現地を、暖房と水抜きの手順を説明しながら見せることが、移住を考える人に対する最も誠実な情報開示になります。
Q. 畑や雑種地がついた別荘ですが、売れますか?
A. 売れますが、地目が農地の部分は農地法の許可や届出が必要になり、買い手が農地を取得できる要件を満たすかどうかで進め方が変わります。宅地部分と分けて売る方法や、農地部分を近隣の農家に譲る方法などがあるため、査定の際に地目の内訳をお知らせください。
Q. 井戸水の物件は、買い手に不安に思われませんか?
A. 説明できる資料があれば問題になりません。直近の水質検査の結果、ポンプの設置時期と点検記録、冬の凍結対策を資料にしておけば大丈夫です。八ヶ岳では井戸は珍しくないため、むしろ公営水道のない立地の良さ(静けさや敷地の広さ)の方が評価されます。不安を招くのは「調べていない」状態です。
Q. 別荘として買った家に移住し、今は住んでいます。売るときに3,000万円控除は使えますか?
A. 生活の拠点として実際に住んでいる家であれば、居住用財産として特例の対象になる可能性があります。ただし適用されるかどうかは実際の居住状況で判断され、特例を受けるためだけの形式的な入居は対象外です。該当しそうな場合は売却前に税理士にご相談ください。詳しくは3,000万円控除の記事をご覧ください。
Q. 山梨側と長野側で、売りやすさは違いますか?
A. 違いは「アクセス」と「取引事例の多さ」に表れます。北杜市の中央道・中央線沿いは移住需要が多く、動きが速い傾向があります。一方、富士見・原村の別荘地は買い手が別荘客寄りで、別荘地の管理状態による選別が強い傾向です。どちらも「冬の実態」と「管理状況」を説明できれば売れます。なお不動産取得税などの地方税は県ごとに扱いが異なるため、買い手への説明は物件のある県の制度に基づいて行います。
リゾート暮らし.comでは、北杜市・富士見・原村の八ヶ岳エリアの別荘・住宅の売却相談・無料査定を承っています。冬の実態を資料にまとめる作業、景観条例の確認、井戸や農地についての説明の準備まで、八ヶ岳ならではの準備からご一緒します。
※制度・データは2026年10月時点の情報です。景観条例の基準は地域・物件により異なるため、個別の適用は市町村の最新資料でご確認ください。

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