
【後編】沖縄北部の観光地図が変わる? ジャングリア開発が示す!観光と不動産への影響
進化する沖縄北部エリア、地価上昇と新たな投資機会の可能性
はじめに
前回までは沖縄県の地理的な要因による北部と南部の観光産業の格差と「ジャングリア」開発が沖縄県内、特に北部にどのような好影響をもたらしうるのかについて考察しました。
今回はその考察の中でも以下の点について、沖縄の不動産業界にどのような影響をもたらすのかについてもう少し踏み込んで考えてみたいと思います:
- 沖縄県北部の滞在期間の増加
- 沖縄県北部に定住する人の割合の増加
- 沖縄県北部全体の所得の増加
1. 沖縄県北部の滞在期間、定住者、所得の増加の要因
観光への影響
単純に沖縄県北部に「ジャングリア」というアミューズメント施設ができることによって国内、海外問わず観光者の北部の滞在期間の割合が増加する ことが予想されます。また、滞在期間が増加する=宿泊施設、飲食店、商業施設の売り上げが増加することに繋がります。
定住者増加の連鎖
この周辺施設の売上が増加することは結果的に沖縄に定住する方たちが増加することに繋がることが予想されます。定住する方が増えれば、以下のような施設の増加が予想されます:
- 銀行ATM
- クリーニング店
- 美容室・理容室
- 医療機関
- その他日常生活に関わる施設
それだけ施設が増えればその施設で働く働き手も増加します。働き手が増加するということは北部全体の活性化、延いては所得が増加することに繋がります。
2. 上記増加から考えられる不動産への影響
2.1 地価への影響
沖縄県全体の地価動向
2025年(令和7年)の沖縄県の最新公示地価は平均16万538円/m²、坪単価では平均53万706円/坪で、全国順位は11位。前年からの変動率は+7.16%で、変動率の順位は全国2位となっています。¹
2024年7月1日時点の県内の基準地価は、全用途(林地を除く)の平均が2014年から11年連続で上昇しており、全国平均のプラス1.4%を大きく上回る伸び率で、特に住宅地の伸び率は5.8%で9年連続全国1位を記録しています。²
北部地域の地価上昇
特に注目すべきは、2023年までは那覇市や中南部地域を中心に地価が上昇していましたが、2024年は北部地域でも地価の上昇が顕著になっています。国頭村、東村、今帰仁村など、以前は横ばいだった地域でも地価の上昇が見られるようになりました。²
恩納村真栄田がプラス29.0%で全国トップの上昇率でした。前年もプラス28.9%の伸びで地価の上昇が止まりません。2025年夏には沖縄北部で大型テーマパーク「ジャングリア」が開業予定であり、それに伴い北部地域でのリゾート関連需要がさらに高まることが予想されています。²³
2.2 他地域のテーマパーク運営による地価への影響事例
東京ディズニーランド(浦安市)の事例
浦安市における過去10年間の公示地価の推移を見ると、2013年の公示地価が29万4653円、2022年は36万2038円と、この10年間で1㎡あたり約6万7000円、約20%も上昇しました。⁴
東京都に隣接する浦安市では地価・上昇率ともに県内トップとなっており、最近10年間は上昇傾向が続き、10年で31%の大きな上昇を記録しています。⁵
USJ(大阪市)の事例
大阪圏では、全用途および住宅地は3年連続、商業地は2年連続で上昇し、それぞれ上昇率は拡大しています。梅田は堅調なオフィス需要に加え、大幅な人流回復を受け店舗需要が回復傾向にあることから、地価の上昇が継続しています。⁶
2.3 民泊需要の増加による不動産価値への影響
2024年7月時点で全国の届け出住宅数は2万5000件を超え、コロナ禍前を上回り過去最多となりました。また4〜5月における全国の民泊宿泊者数は約32万5000人となり、前年同期比で約1.3倍になったことが報告されています。⁷
観光地の物件は、観光客の需要があるため、資産価値が維持・向上する可能性が高くなります。また、民泊として運営することで、物件の価値を高めることができます。⁸
2.4 予想される具体的な影響
宿泊施設の需要増加
- 中規模テーマパークの場合、建設投資に対する生産波及額は、建設投資額556億円の約2倍の1167億円で、雇用創出は5000人以上⁹
- 来場者による飲食・宿泊・物品購入に伴う消費額合計は112億円で、それに対する生産波及額は約2倍の211億円⁹
不動産投資への影響
- 宿泊施設(ホテル・民泊)への投資需要の増加
- 商業施設用地の需要増加
- 従業員向け住宅需要の増加
2.5 今後の展望と注意点
建築費・地価の高騰や宿泊・飲食サービス業での慢性的な人手不足等から、我が国の宿泊施設の供給に陰りが生じる可能性が懸念される一方で¹⁰、インバウンド需要が高い観光地では、ワーケーション・長期滞在向けの需要があるリゾート地として民泊市場の成長が期待できるとされています。¹¹
沖縄北部地域は、ジャングリア開業による観光客増加、交通インフラの整備、豊かな自然環境という強みを活かし、今後も継続的な地価上昇と不動産価値の向上が見込まれる地域と考えられます。
2025年地価調査の結果
全体の地価平均:前年比7.16%上昇(全国2位)¹
この上昇率は全国平均を大きく上回っており、沖縄県の不動産市場が活況を呈していることを示しています。
住宅地の顕著な上昇:
- 恩納村真栄田真栄田原:プラス29.0%で全国トップの上昇率。これは県外からの移住者による需要が強く、リゾート地としての人気が高まっていることが要因です。
- 宮古島市:観光客の増加に伴ってホテル需要が急増し、住宅地も連動して上昇しています。
商業地の顕著な上昇:
- 宮古島市:観光客の増加に伴ってホテル需要が急増
- 宜野湾市:土地区画整理事業が行われ、商業施設の充実や那覇市へのアクセス改善により土地需要が増し、高額取引もみられます
- 那覇市:需要に供給が追いついていない状況が継続
これらのデータは、沖縄県全体、特に観光資源を有する地域での不動産需要の高まりを明確に示しています。
今後の展望
「ジャングリア」開業による沖縄北部の不動産市場への影響は、以下の具体的な数値と事例から予測できます:
宿泊施設需要の急増
- 中規模テーマパークでも来場者による飲食・宿泊・物品購入に伴う消費額合計は112億円、生産波及額は約2倍の211億円
- 2024年7月時点で全国の民泊届け出住宅数は2万5000件を超え、前年同期比で約1.3倍に増加
- 観光地の民泊稼働率は全国平均で40%程度だが、東京の浅草は年間平均で80%以上
投資機会の拡大 北部地域は現在、県外富裕層が別荘を購入する動きも見られ、県外からの住宅投資が地価上昇の要因となっています。ジャングリア開業後は、外資系ホテルだけでなく、一般投資家にとっても以下の投資機会が期待されます:
- 民泊運営(初期投資が比較的少額)
- 商業施設用地への投資
- 従業員向け賃貸住宅の開発
交通インフラの整備
北部地域の最大の課題であった交通アクセスについても、具体的な改善が進行中です:
沖縄総合事務局による整備案(2023年10月)¹²
- 名護市の伊差川ICから本部町を結ぶ14~15㎞の区間整備
- ジャングリアへのアクセス向上を目的とした道路整備
- 官民一体での改善により、観光客の利便性が大幅に向上する見込み
まとめ
「ジャングリア」の開発が沖縄北部の不動産業界に与える影響は、数値データが示すように極めて大きいと予測されます。
現在の北部地域の状況:
- 2023年までは那覇市や中南部地域を中心に地価が上昇していましたが、2024年は北部地域でも地価の上昇が顕著
- 国頭村、東村、今帰仁村など、以前は横ばいだった地域でも地価の上昇が見られる
ジャングリア開業後の予測される変化:
- 観光客の増加:来場者による飲食・宿泊・物品購入に伴う消費額合計は110億円以上(中規模テーマパークの場合の推定)
- 雇用創出:5000人以上の雇用創出が見込まれ、定住人口が増加
- インフラ整備:道路整備¹²により那覇からのアクセスが改善
- 地価上昇:10年間で約20%以上の地価上昇 (東京ディズニーランドの浦安市では10年間で約20%の地価上昇記録)
これらの要因により、沖縄北部は今後最も注目すべき不動産投資エリアの一つとなることは間違いありません。特に、2025年夏のジャングリア開業に向けて、北部地域でのリゾート関連需要がさらに高まることが予想され、早期の投資判断が重要となるでしょう。