
リモートワーク縮小傾向から見るリゾート物件市場への影響
はじめに
LINEヤフーが2024年4月からフルリモートワーク制度を見直し、事業部門は原則週1回、その他部門は月1回の出社を求める方針を打ち出しました。この動きは、コロナ禍で急速に広がったリモートワークの見直し傾向を示す象徴的な出来事といえます。このことからリゾート地・リゾート物件にどのような影響があるのでしょうか。
リゾート不動産市場への影響
1. ワーケーション需要への影響
「ワーケーション」とは、ワーク(=work)とバケーション(=vacation)を掛け合わせた造語。その名のとおり、会社のオフィスなどを離れ、旅行先・帰省先・リフレッシュ地などで余暇を楽しみながら、仕事もする。という働き方です。
しかし、冒頭のような出社義務が各社で課せられるような事態になるとリゾート地の長期滞在から週末利用中心のパターンへシフトすることは容易に考えられます。これが不動産価格にどのような影響を与えるかははっきりとは明言できないものの、確実にワーケーション需要には影響を与えるでしょう。
2. 物件価格への影響
前項のワーケーション需要から判断するとリゾート地の価格に大きい調整が入る可能性があるのではないかとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にコロナ禍で高騰した別荘地は【国土交通省 地価公示・都道府県地価調査】で見ると実は2つのエリアでしか確認できないことがわかります。
軽井沢町
- 軽井沢駅周辺の別荘地:2019年比で約15%上昇(2023年地価公示)
ニセコ町
- ヒラフエリア:2019年比で約23%上昇(2023年地価公示)
※上記以外のリゾート地については、具体的な上昇率を示す公的な統計データや信頼できるソースを見つけることができませんでした。不動産会社の市場レポートなどでは他のリゾート地の価格上昇に関する言及も見られますが、具体的な数値やデータソースが明確でないため、ここでは記載を控えさせていただきました。また、「国土交通省 不動産価格指数」などの統計もありますが、これらはリゾート地特有の価格変動を示すものではないため、参考値として掲載することは控えています。
つまり、リゾート地に価格の変動はそうそう起こらない可能性が高いと言えるのではないでしょうか。むしろ都内から二時間程度で移動が可能な軽井沢に関しては通勤も可能なリゾート地に該当するので底値は固いともいえます。
ニセコ町に関してはインバウンド需要が価格上昇の要因にもなっていると考えられるので、こちらも極端な価格調整は起こり得ないと考えられます。逆に都内から通えない遠隔地物件の需要減少は大いに考えられるので、リゾート地の需要は二極化する可能性もあり得ます。
3. 購入検討者へのアドバイス
前項迄の部分から勘案するにリゾート地の購入検討者特にワーケーションを考えられている方に関しては立地重視の選定が必要になるでしょう。
新幹線及び車での通勤にどの程度時間がかかるのか。出勤頻度がどのように変化するのか。現実的に通えることができるのか。等を勘案しつつ、物件選定を行うべきです。
また、投資対象として物件を選定する方もあくまでワーケーション需要としての判断というよりも長期滞在需要を判断軸とした物件選定を行う必要も出てくるかもしれません。
まとめ
リモートワークから出社義務への転換を発表した主な企業の2024年の動きとしてLINEヤフーだけでなく、ソニーグループも挙げられます。これからも企業のリモートワークからの転換は、今後も続くものと考えられます。
このことからリゾート物件市場に新たな変化をもたらす可能性がありますが、この変化は必ずしもネガティブなものではなく、新しい需要の創出や市場の健全化につながる機会となる可能性もあります。
いずれにしても以上記事がリゾート地の物件選定をする際の一つの判断基準になれば幸いです。
参考文献・データソース
- 国土交通省「令和5年地価公示・都道府県地価調査」
- LINEヤフー:同社プレスリリース
- ソニーグループ:同社プレスリリース