
リゾート物件の相続対策:固定資産税と相続税評価額の違いを理解する
はじめに
リゾート物件の相続には、通常の不動産相続とは異なる特有の課題があります。本記事では、リゾート物件の相続対策の中でも特に重要な固定資産税評価額と相続税評価額の違いや注意点について事例と併せて解説します。
1. リゾート物件特有の事例
花子さん(仮名)は都内にお住まいの専業主婦です。兄弟姉妹はいません。母親お一人が存命でしたが、いつ亡くなってもおかしくない状況でした。
そこで花子さんは財産として相続するものを把握することにしました。調べてみると花子さんの母親は以下の財産を所有していることがわかりました:
- 現預金2,000万円
- 自宅
- リゾート地と言われるような遠方の土地を3つ
遠方の土地は使うこともないので数年前に売却しようと考え、売りに出していましたがなかなか売れず、金額もつかなかったのでそのまま所有していたのです。
「固定資産税も年間2万円程度だし、遠方の土地はまあそのままでいいだろう…」そう考える花子さんには理由がありました。
相続税には【基礎控除額※】というものがあり、今回のケースで言えば基礎控除額は3,600万円。この基礎控除額を超えていなければ相続税に関する手続きは必要ないと考えていたのです。
「現預金は2,000万円程度、自宅も小規模宅地特例が適用されるので1,500万円計3,500万円と価値がつかない土地3つであれば、どう考えても3,600万円を超えないから大丈夫。」そう花子さんは考えていました。
※相続税の3,000万円+600万円✕法定相続人の数。なお法定相続人とは民法で定められている相続人になれる人のことを言います。
2. リゾート物件相続時の落とし穴
「固定資産税が安いから大丈夫。」「固定資産税はかかっていない土地だからそのままでも良い」このように考えられている方はリゾート物件及び遠方の土地をご所有の方でよくいらっしゃいます。
しかし、花子さんのケースのように落とし穴が潜んでいることもあるのです。
まず大前提として以下の用語は全て意味合いが違います:
- 実勢価格:いわゆる相場価格。実際に売り買いされている金額
- 固定資産税評価額:固定資産税の納税通知書で確認する地方自治体が評価主体の評価額
- 相続税評価額:路線価及び倍率表で算出する国が評価主体の評価額
3. 相続税評価額の計算方法と花子さんの事例の振り返り
相続税の土地の評価額は、以下の2つの方式で計算します:
1.路線価方式
- 道路ごとにつけられた1㎡あたりの路線価に、土地の面積を掛けて評価額を算出
- 路線価は毎年7月頃に発表される路線価図で確認可能
2.倍率方式
- 主に路線価が設定されていない地域で使用
- 宅地の固定資産税評価額に、評価倍率表に基づいた倍率を掛けて評価額を算出
花子さんの事例の計算例
固定資産税から評価額を算出:
- リゾート地A:357,142円(固定資産税5,000円)
- リゾート地B:428,571円(固定資産税6,000円)
- リゾート地C:642,857円(固定資産税9,000円)
倍率方式(7倍と仮定)での相続税評価額:
- リゾート地A:2,499,994円
- リゾート地B:2,999,997円
- リゾート地C:4,499,999円
- 合計:9,999,990円
結果として花子さんの相続財産の総額:
- 現預金:2,000万円
- 母親の自宅:1,500万円
- 遠方の土地:約999万円
- 計:4,499万円
4. まとめ
今回の記事で示した通り、以下の理由だけで相続税を軽視するのは危険です:
- 価値がついていない
- 売れていない
- 固定資産税が安い
特にリゾート地は被相続人が所有している事実を相続人が知らなかった等のケースがよくあります。
リゾート物件の相続対策は、早期からの計画と専門家との連携が重要です。状況に応じた適切な対策を選択し、円滑な資産承継を実現しましょう。
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